台風第14号は,大型で強い勢力を保ったまま,九州地方西岸に沿って北に進み,平成17年9月6日深夜に山口県山陰沖の日本海に達した。広島県廿日市市を中心とする広島県西部では,午後より風雨が強まり,6日午後8時から午後10時にかけて降雨はピークに達し,土砂災害が多発した廿日市市友和で24時間雨量377mm,土石流が発生した世界遺産宮島では24時間雨量234mmを記録した。
大雨が集中した廿日市市を中心に,被害が多発し,家屋全壊4戸,一部損壊44戸の被害が発生した他,土石流13渓流,がけ崩れ7箇所,地すべり1箇所の土砂災害が発生した。
世界遺産をかかえる宮島では,9月6日22時頃,大聖院沿いの白糸川上流の弥山山頂付近が崩壊し,白糸川を流下して約16,000m3の土砂が,厳島神社南側の住宅地へ流れ込み,家屋一部損壊9戸が発生するなどの被害が生じた。
また,被害が集中した廿日市市では,玖島地区,永原地区などで土石流が発生した他,広島市佐伯区湯来町多田志井地区で地すべりが発生し家屋に一部損壊が発生するなどの被害があった。
厳島神社の創建は、推古天皇元年(593年)と伝えられ,平安時代後期に厳島神社を崇敬した平清盛の援助を得て、今日のような廻廊で結ばれた海上社殿を造営したとされている。厳島神社は社殿が洲浜にあるため海水に浸る床柱は腐食しやすく、また永い歴史の間には幾度となく自然災害や火災に見舞われてきたが、その度に島内外の人々の篤い信仰心に支えられて修理再建され、今日まで平安の昔さながらの荘厳華麗な姿を伝えている。また,宮島自体も信仰の対象とされており,現在では,特別史跡及び特別名勝:厳島,天然記念物:瀰山原始林,瀬戸内海国立公園:特別地域・特別保護地区,宮島鳥獣保護区,瀰山特別保護地区,風致地区といった様々な法律等により,貴重な宮島の現状の保護に努めている。
白糸川の災害復旧は,昭和20年の枕崎台風被害における災害復旧の前例に倣い,現地で発生した石材を使用する,ソイルセメント工法により現地の土砂を使用する,工事用道路を作らず自衛隊の協力によりコンクリートプラント等を空輸するなど,様々な工夫を施し現状保護に努めた。