枕崎台風は,17日の14時35分ごろ九州南部に当たる枕崎付近に上陸,九州を横断,佐田岬,伊予灘,広島を襲い,米子,松江を荒らして18日朝,能登半島の西側から日本海に抜け,新潟の北から東北地方へ再上陸して太平洋に抜けた。
雨の最も強かったのは17日21時7分から22時7分まで57.1mmである。特に被害のひどかった呉地方では,この台風によって16日9時頃より降り始め,16時ごろ本格的な降り方となり風が相当強くなってきた。17日早暁,雨は依然として降り続いていたが,風は全然なくなった。10時ごろ,また風が出はじめ,午後になり雨と風とともに強さを増し,18時より22時に至る4時間の雨量は113.3mmに達した。
被害の最もひどかったのは,広島,呉市及びその周辺で,県全体では死者総数2,012人を数えた。
呉では,雨が風とともに強さを増した17日午後から各河川渓流は著しく増水し,18時から22時までの113.3mmの降雨の中,大小全ての渓流は,氾濫し,山腹の崩壊が相続き,二河川の堤防決壊を初めとして各谷間より土石流が急斜面を押し流れ,あっというまに1,162戸の家屋を流失,792戸を半壊,そして死者1,154名にものぼる大惨事となった。
大野村(現佐伯郡大野町)では丸石川で大規模土石流が発生し,この丸石川が敷地の中央を貫流する下流部の大野陸軍病院を直撃し180人近くの人が亡くなった。